丸岡内科小児科クリニックでは福岡市東区千早近郊のかかりつけ医として
皮膚科・内科・小児科担当医が適切な診療・処方を行います
血圧の薬は大きな進歩を遂げ、副作用がほとんどなく、人間の体内で毎日生じる毒であるアンギオテンシンという物質から体を守るARB(ミカルディス、ブロプレス等)、アルドステロンブロッカー(セララ)等という優れた降圧剤が開発され、広く使われています。ARBやアルドステロンブロッカー等は血圧を下げる効果に加えて、血管の動脈硬化を防ぐ作用、脳や神経の老化や認知症の発症を防ぐ作用、心臓や腎臓を保護する作用、さらに、糖尿病の発症を防ぐ作用などを併せ持つ、優れた薬剤です。 また、第3世代カルシウム拮抗薬アムロジピン(アムロジン、ノルバスク)という降圧剤は、世界で最も使用されているカルシウム拮抗薬であり、ゆっくり、そして、確実に血圧を下げ、動脈硬化を防ぎ、心臓の負担を減らし、心臓肥大を予防します。そして、心臓の周囲でネットワークを形成して心臓に栄養を補給する血管である冠状動脈の血管の径を広げて、血液の流れを改善し、狭心症や心筋梗塞を防ぐ優れた効果があります。 ARBと第3世代カルシウム拮抗薬アムロジピンの2種類の薬が1錠にまとめられた飲みやすく、価格も少し安くなる合剤(ミカムロ配合錠AP、BP、アイミクス配合錠HD等)も開発され、汎用されています。
安全性が非常に高いエゼチミブ(ゼチーア)というお薬の登場によって、コレステロールの治療をお勧めしやすくなっています。重症の高コレステロール血症の患者さんにも従来のスタチン系の薬剤(メバロチン、リピトールなど)と併用することによって、良好なコントロールが得られます。また、青魚の油から抽出されたEPAは中性脂肪を下げ、血管に直接作用して、動脈硬化を防ぐなどの効果を持ちます。
健康診断や病院の検査などで、図1(a)のような軽い異常がいくつか見つかっても、従来ならば放置されがちでした。しかし、図1(b)に示すように、最新の研究で、軽い異常が3個以上重なると、大きな病気(重症糖尿病など)と変わらないくらい心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすいことが判明しました。これがメタボリック症候群です。 メタボリック症候群はどのようなメカニズムで、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすのでしょうか?メタボリック症候群の方は高率に糖尿病予備軍(食後高血糖、軽症糖尿病)を合併しています。図2に示すように、健康な人の血管の内側の表面は血管内皮細胞がすき間なく並び、コーティング膜のように働いて、血液中のコレステロールをはじき返しています。ところが、食後に一過性に高血糖が生じると、内皮細胞と内皮細胞の間に、すき間が生じて、コレステロールが血管の壁の中に浸み込んで、膨らみ(プラーク)を作ります。これが動脈硬化の始まりです。動脈硬化が進むと血液の流れが悪くなって、狭心症などの病気が起きます。そして、さらに動脈硬化が進行すると、血管の中に血液の固まり(血栓)が生じて、血管の中が閉塞し、血液の流れが途絶えて、閉塞した部位より先の細胞が死滅し、心筋梗塞や脳梗塞となります。
▼図1(a)
▼図1(b)危険因子の数と虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)のリスク
メタボリック症候群の危険因子である軽い異常を一つ一つ根気よく治療して、解消していくことが、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの病気を予防することにつながります。そのためには、日常の連続した努力による、食事や運動、禁煙など生活習慣の是正が重要です。また、健康診断などで、軽い異常が見つかった際には、放置せず、早めに病院を受診して、軽症のうちに治療することが重要です。
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